小学生男子が学校のトイレで個室に入るのは、下手したら平穏な学校生活をすべて失うほどの大チャレンジで、それは俺が児童やった三十年ほど前から、そして今でも大差ない状況らしい。
我慢して我慢して個室を使うことなく卒業する小学生男子も少なくないんじゃなかろうか。女子には理解しにくい事態かもしれん。ともあれ、俺は個室デビューした。小学5〜6年ぐらいやったかな。
あるときから突然、給食後には必ず腹痛・下痢に襲われるようになった。腹痛ぐらいなら絶対に我慢するけど、下痢のビッグウェーブはさすがに無視できん。教室での粗相なんて死を意味する。
でも休み時間だけは何が何でも避けないかんので、十分ぐらい脂汗で我慢して、授業中に手を上げて行った。勇気は要るが、休み時間に行く勇気とは比にならん。
5時間目は保健室でよく休むようにもなった。ついたての向こうから「腹痛、原因不明らしいわ」「思春期やしねえ」という養護や担任の先生の会話が聞こえてきて、なぜかものすごくイヤやったことを覚えてる。
個人病院や総合病院、いろいろと母親に連れていかれて、神経性の十二指腸潰瘍と診断されたり溶連菌感染症と言われたり、要するに判然せんかった。当時は過敏性腸症候群なんて名前がなかったんかもしれん。
中学以降は、似たようなトイレ仲間ができて休み時間も平気になった。恥ずかしいとか言うてる場合じゃないという意識を共有してた。学校の個室なんて……と躊躇する生徒も多かったから、優越感すら持ってた。
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